保険における歯周病の治療の流れ
歯周病とは
歯周病とは、歯の周囲に付着したプラーク(細菌のかたまり)が歯と歯ぐきの隙間に入り込み、歯ぐきに炎症を起こし、その炎症が慢性化すると、歯を支えている周りの骨を溶かしてしまうという、怖い病気です。痛みなどの自覚症状が少なく、ひとたび進行してしまうと治療が困難になります。近年では動脈硬化、アルツハイマー、糖尿病などとも密接な関係が認められている病気ですので、予防が必須となります。
歯周病は生活習慣病
厚生労働省は1996年(平成8年)より、それまで成人病と称した大人の慢性疾患を生活習慣病という名称にかえました。「習慣の改善によって病気の予防や治療を行う」という考え方がひろがることを期待しているからです。これは、例えば糖尿病や高血圧になってしまったら定期的に通院すると思うのですが、糖尿病も同じです。定期的な通院をして管理を行う必要があります。
第一に予防。そして、早期発見・早期治療が大切ですね。
このような症状に思い当たる方は歯周病の可能性があります。
早めに受診しましょう。
- ハミガキをすると、歯茎から出血する。
- 最近、あまり硬い物が食べられなくなってきた。
- 歯が動いて、痛くて噛めない。
- 口臭がひどく、歯茎からウミがでる
歯周治療
歯の表面に付着しているプラーク(歯垢)がバイオフィルムとなり、微生物の集合体として毒素を放出しながら増殖してくると、生体の炎症反応と免疫反応をともない、歯周組織は破壊されて最終的には歯が抜けてしまいます。抗菌薬も一時しのぎにすぎず、効果的な除去方法は機械的に取り除くしかありません。手遅れになってしまった場合は抜歯以外の選択肢がなくなってしまいます。
対策としてもっとも大切なことはホームケアとしての歯ブラシ、歯間ブラシ、フロスなどによる機械的洗浄と生活習慣の改善、それに歯科医院での専門的な治療です。
早い段階からの定期的な受診により、早期なうちに問題を解決して、出来るだけ多くの健康な歯を残していく努力をしていきましょう。
(1)精密検査
ポケット検査
このように、歯と歯ぐきの隙間に深さを測る器具を挿入し、歯周病の進行具合をみていきます。数値が深いほど、歯の周りの骨の吸収が進んでいるということがわかります。
歯肉炎
軽度歯肉炎
中等度歯肉炎
重度歯肉炎
(2)診断
検査結果をもとに、あなたにとって最適な治療方法・治療計画をたてます。
(3)清掃指導
歯周病の一番の治療は毎日のハミガキです。
プラークコントロールができていなければ、歯石除去をしてもすぐに再沈着を起こしてしまいます。
磨いている?磨けている?
「磨いている」と「磨けている」とは全く別のことになります。
「磨いていても磨けていなければ意味がない」ということです。
ですから当医院では患者さまご自分に合った一人一人に合ったブラッシング方法を歯科衛生士が指導いたします。お口の中が人それぞれは違うように,ブラッシングの方法も違って当然なのです。
(4)スケーリング
歯や歯根に付着した歯石を除去することを言います。
歯石自体は、歯周病を起こす原因というわけではありません。ただ、歯周病菌の住まいになってしまうため、除去することが必要です。
→初回の通院でおよそここまで行っていきます。保険を使って3割負担の方で4000円から5000円程度となります。
(5)検査
歯石を除去した後、1週間後以降に歯周ポケットの変化を検査します。
(6)ルートプレーニング
スケーリング終了後、歯茎に隠れた部分まで丁寧に感染したセメント質や歯石を除去し、歯や根の表面を滑らかにします。
歯垢や歯石は、歯肉に隠れた目に見えない部分(ポケット内)にも溜まります。
歯根(ルート)面についたプラークや歯石、沈着物、死んでしまったセメント質などを特殊な器具で取り除いて表面をツルツルにし、再び汚れや細菌が付かないようにします。
このタームは保険のルール上一度では終わりません。全部で6回ほどかかります。
(7)検査
治療前とどう変化したかを検査することで、今後、どれくらいの間隔でどういったケア、メインテナンスが必要かを検討していきます。
歯周外科治療
また、基本治療で一部ポケットの深さが改善されず、ポケット内で細菌が生息し、ブラッシングで除去できない状態や、歯周病の進行が進んでしまった状態に対して、外科的にポケットの深さを減少させる手術があります。
また、歯周組織再現誘導材料のエムドゲイン®やリグロス®を用いて歯周組織を再生させる手術を行う場合もあります。ポケットが改善されれば、SPT・メンテナンスに移行します。
(8)SPT・メインテナンス
歯周病の原因となる菌を生涯除去し続けることが歯周病を予防し、お口の健康を維持するために必要となります。 細菌の集団である歯垢は、毎日の適切なブラッシングでほとんど除去することが出来ますが、深い歯周ポケットの中や歯並びの悪い所にある細菌はブラッシングでは除去出来ません。これらは歯科衛生士による専門的なクリーニングによって除去してもらうことをおすすめします。
治療により症状が改善したとしても、そこは一度歯周病に侵されたところです。治ったといっても溶けてしまった骨が元通りに戻っているわけではなく、ほとんどが歯と歯肉が弱い結合で治っているのにすぎないのです。ですので完治した。というよりは症状が落ち着いているという表現が正しいです。ブラッシングが不十分であったり、メインテナンスを怠ると細菌が活動しはじめ、歯周ポケットが深くなり容易に「再発」をおこします。
また残念ながら治療の限界のため、部分的に治りきらないところが残ってしまう部位でもSPT(サボーティブペリオドンタルセラピー)メンテナンスを継続することにより歯周ポケットがさらに深くならないように「進行を食い止める」ことができるのです。