基本的な歯周病の治療の流れ
歯周病の治療方法
歯周病治療の基本は、原因である細菌を除去することです。
初期の段階では、治療方法は比較的シンプルですが進行してポケットが深くなると、外科的な処置が必要になります。
また歯周病の発症・進行には、プラーク以外にも喫煙や糖尿病なども大きく影響しますので、これらに対する治療も必要となります。
歯周病は進行してしまうと歯の周りの骨が減り、放置すると歯がグラグラになり、最終的には抜け落ちてしまいます。したがって、歯周病は早期発見・早期治療が重要です。歯周病についての知識を身に付け初期症状に気付き、適切な治療を受けることが大切です。
歯周病治療の流れ
検査⇒診断⇒初期治療⇒再評価⇒(歯周外科治療・再生治療⇒再評価⇒)メンテナンス
()は歯周病の進行度や再評価時の状態に応じて
歯周病の原因である細菌は歯の表面に付着するプラーク中に存在します。また歯石の表面にもプラークは付着します。
基本的には患者さん自身によるセルフケアでプラークを除去し、歯ブラシでとれない歯石は歯科医院で除去してもらいます。
診査・診断
主な診査の項目には次のようなものがあります。
- プロービング
プローブという器具を使って、歯周ポケットの深さを確認します。
- レントゲン診査
歯槽骨(顎の骨)の状態を確認します。
- 口の中の汚れのチェック
プラークや歯石の付着状況を確認します。
- 喫煙について
1日に吸うタバコの本数と喫煙歴について問診します。
- 全身疾患についての問診
特に、糖尿病など歯周病に関連する全身疾患の有無と既往について問診します。
以上の診査結果をもとに、診断を行い、治療計画を立てます。
喫煙・全身疾患へのアプローチ
歯周病治療成功のため、喫煙者には禁煙・節煙することの重要性を説明します。また血糖コントロールができていない糖尿病患者では、主治医に糖尿病の治療を依頼します。
初期治療
上記診査により歯肉炎あるいは歯周炎と診断された場合、次のような基本治療を行います。
- ブラッシング指導
自宅で行うセルフケアの質を高めるために、適切な歯の磨き方を指導します。きちんと磨けるようになることが、将来的に歯を長持ちさせる上で最も重要です。
- 歯石除去
歯石とは、プラークが石灰化してかたくなったものです。歯石は歯ブラシでは除去できないため、専用の器具で除去します。歯石には、歯肉より上にある歯石(縁上歯石)と、歯肉の下に隠れている歯石(縁下歯石)があります。
ポケットが深くなると、縁下歯石が歯根表面に付着しますが、歯肉の下に隠れていて直接見えないので、専用の器具を用いて手探りで除去します。
これは全部で6回ほどかかる場合があります。
- 修復物(被せ物・詰め物)のチェック
修復物が歯にぴったり合っていないと、段差やギャップができて、プラークや歯石が付着しやすくなります。このような場合、段差やギャップをなくすため修復物の形を修正するか、修復物を新しく作りなおします。
- 咬み合わせのチェック
歯周病治療の基本はプラークコントロールですが、咬み合わせが悪く一部の歯に大きな負担がかかると歯周病が悪化することがあります。このような場合、咬み合わせの調整を行います。
再評価(初期治療後)
基本治療を行った後、患者さんのプラークコントロール、歯肉の状態をチェックし、再度ポケットを測ります。患者さんの清掃状態・歯肉の状態が良く、ポケットが浅くなれば、メンテナンスに移ります。
患者さんの清掃状態が良いにもかかわらず、ポケットが深い場合は歯周外科治療を行います。
基本治療でポケットが改善しない場合には、外科的な治療を行います。歯肉を切開し、歯根を露出させて、歯根に付着した歯石や汚れを除去します。
歯周外科治療では、歯肉の下に隠れていた歯石を実際に目で見て除去することができるので、確実に細菌を除去できます。また、治癒後はポケットが浅くなるので、プラークコントロールが行いやすくなるというメリットがあります。
歯肉炎は、歯肉のみに炎症があり骨の吸収はありませんので、適切な治療を行うことによって元の健康な状態に戻すことができます。一方、歯周炎ではすでに骨が減ってしまっており、治療を行うことで歯肉は健康な状態になっても、一度失われた骨は元通りにはなりません。
しかし再生治療によって、失われた歯周組織を取り戻すことが可能になっています。 再生治療は、歯周外科治療時に行われ、歯槽骨の再生やポケットの更なる改善が見込まれます。
再評価(歯周外科後)
歯周外科治療を行った後、再度患者さんのプラークコントロール、歯肉の状態をチェックし、ポケットを測ります。患者さんの清掃状態・歯肉の状態が良くポケットが浅くなれば、メンテナンスに移ります。
メンテナンス
治歯周病治療により健康な歯肉を取り戻した後は再発を防ぐため、定期的なメンテナンスを行います。メンテナンスの頻度は、患者さんの清掃状態や歯周病の度合いにより異なります。通常、3~6か月に一度のメンテナンスを行います。
歯周病治療にかかる期間
治療期間は、歯周病の進行度により異なります。
基本治療でポケットが浅くなり歯周外科治療の必要が無ければ、治療期間は通常、2~3か月程度です。 ポケットが深く歯周外科治療が必要な場合は、治療期間は長くなります。インプラントやその他の補綴処置も伴う場合は完了までに数年単位でかかる場合がございます。